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徒然のブログ

つれづれの思いなどを

ラジオを聴く犬

 定期的に家事代行で伺っているお宅に家の中で飼っている犬がいてね、その犬君は犬種は知らないけどコリーの小さいので、鼻がすっととおってて、すごく賢そうな顔立ちの彼なんだ。
 その犬君は、白内障で瞳が白くなっていて、歩くのには杖が欲しいぐらいの足どりなんだけど、僕がその家の玄関とびらを開けるとさ、嬉しそうにしっぽを振って、爽やかな声でワンワンとほえて、出迎えてくれる彼なんだ。

 僕がそこのフローリングを這いつくばってタオルで拭いているとね、いつも犬君は僕のそばに寄ってくるんだよ。
 そうすると四つんばいになっている僕の顔と、犬君の顔の高さがちょうど同じになってね、いつも彼は、僕の息の匂いを嗅ごうとするみたいにして、僕の口もとに長い鼻を寄せてくるんだ。
 めずらしい匂いがするのかな。

 こないだいつものように玄関の上がりかまちにラジオを置いて、僕はラジオ聴きながら家じゅうのフローリングを拭き掃除してて、ふっと玄関のほうを見たらね、彼はいつのまにかラジオのそばに寝そべっていて、そうしてラジオのほうに顔を向けて、そうだ、あのビクターの犬みたいな顔で、アナウンサーの喋るのをじいっと聴いてたよ。

 犬くん、彼はもう、十七歳になるんだって。
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